応研特集 新製品は従来製品とは全く異なる内容に
ソフトの基本機能を強化しながら
法改正に迅速に対応可能な開発体制
2008年3月に発売された「大臣2008シリーズ」は、セキュリティ機能を大幅に強化するなどソフトとしての基本機能を強化している。その上で法改正に迅速に対応できる開発体制を整えていることが応研の強みとなっている。そこで開発部門の責任者である上野眞宏取締役開発部長に、開発者の目から見た今年度に行われる法改正のポイントと、現在開発中の新製品について聞いた。
大幅に強化されたセキュリティ機能独自認証機能を新たに付加
3月に発売された「大臣2008シリーズ」は、Windows Server 2008に対応している。応研では、前バージョンのWindows Server
2003の時と同様に、認定ロゴを取得する準備を進めており、そう遠くない時期に取得する予定だ。
Windows Server
2008は、さまざまなビジネス規模と多目的な用途に対応し、企業のビジネス基盤を支えるサーバーOS。サーバーOSとしてのセキュリティが向上しており、ソフトとしての堅牢性という点では前バージョンを大きく上回っている。それに対応すべく大臣2008シリーズのセキュリティも大幅な機能強化を実現した。
また、Windows Server
2008ではターミナルサービス機能が大幅に強化されており、その影響で、大臣2008シリーズでターミナルサービスを利用する際にも、セキュリティが強化され、より使いやすくなっている。
大臣2008シリーズは、こうしたWindows Server
2008の特性に呼応すると共に、応研独自の新機能も多数搭載している。これらの機能の特徴について、応研の開発責任者である上野眞宏取締役開発部長は次のように説明する。
「全製品共通の機能強化ポイントの第一点目にあげることができるのがセキュリティ機能の強化。これまでの製品では、認証機能としてはWindows認証を利用してきましたが、今回、Windows認証に加え、大臣独自の認証を行うことを可能としたことで、より厳重で柔軟なセキュリティ管理が可能となりました」
大臣シリーズを起動するまでに、Windows認証、大臣2008シリーズの独自認証という二つの認証を実施するので、より厳重なセキュリティチェックを行うことができる。
また、複数の担当者が大臣シリーズを利用する場合、二人目の利用者からは大臣シリーズ独自の認証でログインできる。複数で大臣シリーズを利用する場合には、セキュリティ強化と共に、認証の手間が軽減される。
セキュリティに関してはさらに機能強化を進める計画で、ICカードを利用した認証システムや、指紋や静脈など生体認証システムにも対応する予定となっている。
こうした外部セキュリティとの連動により、「より高度なセキュリティが必要というお客様のニーズに対応できる」(上野開発部長)こととなる。
外部および内部漏洩しては困る、企業の業務データに相応しい強固なセキュリティ機能を持ったことが大臣2008シリーズの特徴といえる。
建設業や公益法人などの法改正に即座に対応可能な開発体制を整備
応研の開発陣は、こうした業務ソフトとしての共通の機能強化に加えて、「建設大臣」は建設業向け、「公益大臣」は公益法人向けの法改正に対応した製品開発が行える体制を整えている。
「法改正の概要と、会計ソフトがどう対応していくのかについては、専門家のアドバイスが必要になる。私どもは専門家のアドバイスを受け、法改正と同時に対応版が提供できる準備を進めています」と上野開発部長は話す。
それでは今年度行われる予定の法改正のポイントを解説してもらおう。
まず、2008年4月に施行された建設業向けの建設業法施行規制の改正は、「公共工事の入札資格に関連するものだけに、地方の建設業者にも影響が大きいもの」と上野開発部長は指摘する。
入札を行う建設業者を、より厳しい視点で審査するための法改正であり、建設業者としてもソフトウェアで業績などをきちんと管理し、健全な経営を外部にアピールしていく必要がある。
法改正を対応ソフトの販売機会と捉えると、「多くの建設業者に影響ある法改正だけに、旧バージョンからバージョンアップを行っていないユーザーを持っている販売パートナー様は、是非、このタイミングでバージョンアップを薦めて欲しい」と上野開発部長は訴える。
現在のところ詳細が決定していないが、12月施行予定の公益法人の法改正の内容は、より複雑なものとなる見通しだ。
「公益法人に強い会計士と協議しているが、公益法人の会計処理に一段と厳しさが求められる、大幅な法改正となりそうです。公益法人会計は、平成18年にも変更になっているが、それがさらに変わり、会計士が、『複雑な会計処理が必要となるため、ソフトを使わなければ処理できなくなるのでは』と話しているほどです。公益法人にソフトの使用をアピールする絶好のチャンス」と上野開発部長。
詳細が決まっていない段階ではあるものの、現時点から公益法人にソフト活用をアピールする価値は十分にありそうだ。
秋公開予定の新製品の登場でERPよりも密なデータ連係可能に
最後に、上野開発部長に開発途中の新製品について聞いてみた。
「これまでの製品とは根本から異なるものとなります。現在の大臣ERPも、データ連係機能がセールスポイントですが、新製品はよりデータ連係機能が強化されます。また、業種に特化した機能を作るにあたっても、ひとつのインターフェイスを維持したまま、各パートナー様(ODDSパートナー)の業種ソリューションと組み合わせて利用することができるようになります」
各機能をモジュール化し、必要なモジュールを選んで組み立てていくことで、これまでとは全く異なる感覚で外部ソリューションとの連動も可能となる。
「おそらく、これまでは応研製品を利用していなかった中堅企業が利用可能な製品となっていく」という。
新しいOSへの対応、法改正への対応、さらに新しい製品の開発と、開発スタッフは作業に追われているが、「新製品については、『急ぐ必要はない』と社長とは話しています。満足できるクオリティになった時に公開したい」と上野開発部長は話している。
2008年4月1日付で、建設業法施行規則が改正された |
今回の規則改正では、公共工事を行う企業評価基準「経営事項審査」の内容が改められた。その狙いは2つ。ひとつは、公共工事を行う企業を評価する際の物差しを、公正かつ実態に則したものとすること。もうひとつは、生産性の向上や経営の効率化に向けた企業の努力を評価・後押しすること。平たくいえば、きちんと経営を行っている企業が評価される内容となっている。 その結果、評価項目および基準が見直され、規模評価、経営状況評価、技術力評価、社内的責任の果たし方による評価の計算が見直しされている。 規則変更に伴い、応研では「建設大臣2008」の計算式の変更を迅速に反映。プログラムのバージョンアップを行っていないユーザーはこれを機会にバージョンアップを行わなければ、公共工事入札に参加できなくなる可能性もある。そうした中でパートナー企業にとっては、建設業のユーザーにこの点を訴えることで、バージョンアップによるビジネスチャンスを喚起できるわけだ。 |
応研特集 より厚いパートナーフォローを東京本社で実現
お客様の立場で行う営業支援技術、業種知識の両方で実現
応研では、福岡の本社だけでなく、東京本社からパートナーや顧客支援を行う体制を拡充している。より規模の大きな顧客が大臣シリーズのユーザーとなる中、営業スタッフにも技術、業種や業務の専門知識をもったサポート体制が必要な時代となっている。取締役営業部長の岸川剛氏は、「専門知識を持ったスタッフがフォローすることで、お客様やパートナー様の目線に立った営業支援を行っていく体制を整えている」と話している。
重要性増す東京本社の役割専門知識ある営業支援体制
福岡県で創業した応研だが、パートナーおよび顧客支援体制の更なる拡充を目的に、2005年に従来の東京支社を東京本社に格上げした。ネット環境がこれだけ整った現在、福岡本社発であっても情報発信やサポートが遅れることはないだろう。
しかし、東日本に拠点を置くパートナー企業や、ユーザーにとっては、「福岡は遠い」というイメージが少なからずあったようだ。
「東京本社となってからは、そういったイメージが払拭されるようになりました。パートナー様や、お客様が気軽に声をかけてくださるようになり、東京本社へかかってくる電話の本数が増えるなど、その成果が明確に現れています」と取締役営業部長の岸川剛氏は断言する。
「応研製品を推奨していただいているパートナー様は、『他社のパッケージソフトでは導入できなかった企業への導入が、大臣シリーズではうまくいった』とおっしゃるところが多い。パッケージソフトでありながら、お客様に合わせた仕様に変更できる自由度の高さが要因となっているようです。その結果、企業規模の大きなお客様の導入例が増えるなど、よりきめ細かいパートナーサポート体制が求められるようになってきました。東京本社ではそうした声に応えて、パートナーおよびお客様フォローを実施していきたい」と続ける。
特に08年3月に発売した「大臣2008シリーズ」では、Windows Server
2008のターミナルサービス機能を活用した、複数拠点を接続した利用が、よりローコストで、手軽でありながらもセキュアに実現できるようになっている。複数拠点を接続して利用する場合、大臣シリーズのノウハウに加え、回線やネットワーク機器、セキュリティなど広範囲なノウハウが必要となる。
営業とはいえ、技術知識がなければ販売パートナーへの支援が難しい商談において、岸川営業部長は次のように支援体制について話す。
「東京本社では技術的な視点をもって営業ができる人員を増やし、複雑なシステム構築をメーカーとして支援する体制を引き続き強化しています。技術を知った営業スタッフが必要という声は増加しており、この部分はさらに強化していきます。また、お客様からのご要望が多い点については、営業部門のスタッフが次期製品開発に生かす体制も整えています。例えば、セキュリティの設定については、よりセキュアな環境を望む声も多く、今後は静脈認証システムに対応するなど、お客様の声を製品に反映していきます」
各業種の専門知識と新製品への移行円滑に支援する技術体制を確立
応研の営業チームは、技術支援に加え、「建設大臣」、「福祉大臣」、「医療大臣」、「公益大臣」など強みを持つ業種の専門知識を持つことで、パートナーや顧客フォローができる体制を整えていることが大きな特徴となっている。
「今年は建設業の法改正、公益法人の法改正が大きなトピックとなっています。法改正による影響といった専門的な話については、建設業経理士、社会福祉法人会計基準の認定資格を有したスタッフがおり、お客様の立場で営業支援ができる体制を整えていることが大きな強み」(岸川部長)。
この「建設業経理士」というのは、建設業に関する簿記・会計の専門知識が必要な資格制度。以前は、「建設業経理事務士」という名称であったが、現在では資格の1級、2級が「建設業経理士」という名称で、3級、4級が「建設業経理事務士」の名称となっている。
建設業経理士が在籍する建設業者は、入札の際のポイント加点につながるなど建設業者にとっては重要な資格制度。応研には、この資格を取得したスタッフがおり、まさに建設業者の目線に立った顧客支援が行える体制を整えている。
「建設業への販売経験が少ないパートナー様を支援していくことも可能」(岸川部長)で、メーカーとパートナーが一体となった営業体制を実現している。
また、今年12月に変更が予定されている公益法人の会計制度についても、「専門団体と連携し、公益法人のお客様を支援する体制を現段階から構築しています。新たに『公益大臣』を販売したいというパートナー様を営業支援する体制もあるので、気軽に当社に声をかけて欲しい」と岸川営業部長は話す。
専門知識が必要な特定の業種をターゲットとした営業は、経験がないと新たに踏み込むことを躊躇してしまうパートナーも多い。しかし、法改正は新たにソフトを導入するユーザーが増加するタイミングであり、販売パートナーにとっても大きなビジネスチャンスだ。応研側では積極的にパートナーをフォローする体制を整え、対応していく計画だ。
秋登場予定の新製品ではSI事業者との連携も計画
営業部隊の今後の大きな課題となるのが、現在開発中の新しい製品を販売していくための体制作りだ。より規模の大きな企業への導入を視野に入れ、開発している製品だけに、システムインテグレーション能力をもった販売パートナーが必要となる。
そのあたりの体制について岸川営業部長は、「新製品は、これまでのパッケージソフトでは実現できなかったお客様の要望を吸収しながら、オーダーメイドのシステムとは違う、低コスト、短期導入を可能としたものとなっています。大臣シリーズが最初の製品を販売してから20年、従来からSI的な導入がしたいという声がパートナー様からあがっていました。新製品はそこに応えることができるものになります。是非、期待して欲しい」とコメントする。
既存のパートナーは、業種知識が豊富な企業やネットワークシステム構築を得意とする企業など、それぞれ異なる得意技を持っている。「こうしたパートナー様の得意技をより生かすことができるのが、新しい製品」と岸川営業部長は考えている。
「新製品を機会に、新たに応研のパートナーとなる企業もあれば、既存のパートナー企業が新しい売り方を始めるケースなど、いろいろ想定できる」というだけに、技術、業種知識の両面から営業支援体制を強化し、対応していく計画だ。(週刊BCN 2008年5月26日号掲載)
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応研特集 パートナー、顧客、応研の全てにプラス効果
パートナー製ソフトとの連動が
新しいソリューション拡充を実現
大臣シリーズは、パートナー企業(ODDSパートナー)が開発したソフトとの連動機能に優れていることが大きな特徴となっている。応研にとってパートナーが開発したソフトとの連動を実現することで、自社にはないノウハウを持ったソリューションを揃えるチャンスとなる。一方、これまで独自にソフトを開発し、特定地域でソフトを提供してきた企業にとっては、新しい販売チャンスを得る機会となる。
大臣シリーズの特徴として、パートナー製品との連携によって、様々なソリューションを構築することができ、機能を向上することができる。
「パートナー様のソフトとの連動は決して珍しいことではありません。しかし、大臣シリーズは根本的に自由度が高く、他社ソリューションとの連動もより深く行えるところが、大きな強みとなっています」とソフトウェア事業本部 ソリューション&カスタマービジネス部
リーダー 坂元秀光氏は説明する。
大臣ERPシリーズには、「OHKEN Direct Database
Server=ODDS」という独自モジュールが搭載されている。この独自モジュールを介して、大臣のプログラムと、他社が開発したソリューションの連携が可能となる。
「かつて、お客様からは、『こんな機能が欲しい』といった新しい機能の搭載要望が多くありました。しかし、現在のようにソフトウェアの機能が成熟し、お客様のニーズも多様化した結果、Aという機能を必要とするお客様もいれば、全く必要としないお客様もいる。メーカーが全ての機能を作り込むことが、お客様の望みとは限りません。新しいお客様のニーズに対応していくためには、当社が基本部分を作り、ODDSパートナー企業が開発したソフトを必要に応じて加えるのもひとつの方法です」(坂元リーダー)。
特に業種に特化した機能は、開発する側にノウハウが必要だ。応研は建設業、医療法人、社会福祉法人、公益法人などの業種向けソフトを開発しているものの、さらに多くの製品を開発するには新しい業種ノウハウを獲得する必要がある。低コストで、すばやく様々な業種ソリューションを揃えるためには、応研自身が新たなソフトを作るよりも、以前からその業種向けソリューションを開発してきたパートナー企業と連携するほうが、結果としてユーザーにとっては望ましい。
実際、ODDSパートナーとの連携を強化したことで、これまでパッケージソフトの導入が難しいといわれてきた販売管理ソフト「販売大臣ERP」の販売本数が増加したという。また、「独自でソリューションを開発してきた企業にとっても、ODDSパートナーとなることはメリットがある」と坂元リーダーは話す。
「従来、ソフトのバージョンアップはメーカー側の都合で実施することができました。しかし、現在のようにセキュリティ対策が必須となっている時代には、OSに新しいセキュリティパッチが当たった際には、アプリケーションメーカーも対応が必須となる。パッケージソフトメーカーにとっても、これまで手組みソフトを作ってきたソフト開発会社にとっても厳しい時代といえるでしょう。当社は、セキュリティパッチ対応のノウハウを持っているので、パートナー企業をサポートしていくことができます」
これまで独自でソフト開発を行ってきた会社にとって、応研のようなパッケージソフトメーカーは、「競合相手」と認識されてきた。しかし、「これからは競合ではなく、手を組んでウィン・ウィンの関係を築くことができるパートナーと認識して欲しい」という。
パートナーとの連携によるビジネスの拡大は、現在開発中の新製品でより鮮明なものとなる。
「新製品は中堅企業をターゲットとした製品となっています。中堅企業向けに製品を開発してきたパートナー企業との連携によって、これまで手組みソフトを利用してきた企業に、パッケージソフトの良さをアピールしたい。ただし、その際にはパッケージは不自由と感じられてしまっては導入がうまく進みません。これまでのパッケージ製品では考えられない自由度の高さと、パッケージならではの容易さを実現するために、お客様の実態を知り、技術力をもったパートナー企業が必須」と坂元リーダーは強調する。
既存の大臣シリーズでの連携には一段と拍車をかけ、新製品においてもパートナーの声を反映させながら、さらに製品の完成度を高め、開発を進めていく方針だ。(週刊BCN 2008年5月26日号掲載)
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